思考実験「功利の怪物」をテーマにした作品。
動画はAcTTRACTのチャンネルにて近日公開予定!

【登場人物】

木村:20代後半。双子の妹がいる
水谷:木村の友人
まりえ:双子の女子高生(姉)、内気な性格。 
まりな:双子の女子高生(妹)、天真爛漫で明るい性格。

【本文】
 舞台は木村の家。
 木村、友人の水谷と電話している。

水谷「来週空いてる?久々に飲み行こうぜ」
木村「来週……は、ちょっと厳しいな。親父とお袋の三回忌でさ」

水谷「そっか。大変だな」
木村「まぁ、父親の代わりみたいなもんだから」

 木村、そのままWEB記事を見ている。
 そこには「"家庭幸福度"10,000以上は父親の義務!?」と書かれている。
 
 また木村の携帯には、「木村家の家庭幸福度」が表示されている。数値は7,500。
 木村、その数字を見てため息。

木村「はぁ。やっぱ一人一人の幸せを上げるしかないかなぁ」
水谷「あんま無理しない方が良いぞ?」

 木村、再び記事の内容に目をやる。
   そこには、「家庭幸福度とは家族一人一人の幸福度の合計です」と書かれている。

木村「そうはいかないよ。あ、でも今日、面白いものが届くんだ」

 そのタイミングでピンポーンとチャイムがなる。

木村「お、来た来た。じゃ、また暇な日連絡するからさ。今度遊び来いよ」
 木村、電話を切り、嬉しそうに部屋から出て行く。

 木村、ダンボールの中からVRカメラを取り出す。
 そこへ、まりな(妹)、まりえ(姉)がやってくる。

まりな「お兄ちゃんー、お腹空いた〜」
まりえ「なにそれ?」

木村「これはな、俺の行動が、他人の幸福度をどれだけ増やしたり減らしたりするかが分かる道具なんだよ」

まりえ「どういうことー?」
まりな「ねー、お腹空いたー」

木村「ちょっと待ってて。よし、やってみようか」

 木村、ケーキをまりなとまりえの前に持って来て、VRカメラをつける。

 木村、カメラの映像越しにまりえを見ると「1200→1400」と数字が表示される。

木村「つまり、このケーキでまりえの幸福度は1400まで上がるってことか」

 木村、次にまりなを見ると「1200→1900」と表示。

木村「なるほど。まりなは1900ね」

木村「まりな、これ食べる?」
まりな「食べたーい!」

 木村、カメラを外しスマホの数値をチェック。全体の幸福度が上がったことに満足な様子。

 さらに2人に話しかける。

木村「なあ、今から服を買ってあげようと思うんだけど」

 木村、再びVRカメラをつける。
 カメラの視点。まりな、まりえの前に「1900→2900」「1200→1300」と表示され、今度もまりなの方が上がり幅は高い。

木村「よし。まりなに買ってあげよう。なるほどこれは便利だぞ」


 後日、水谷が木村の家を訪れる。
水谷「おーい、ドア開いてたぞ?」

 部屋の中央にはまりな。幸せそうにケーキを食べている。
 部屋の隅にはまりえ。ろくに食事を与えられておらず衰弱している様子。

 戸惑った様子の水谷の前に、木村が現れる。痩せこけて目は血走り、既に正気でない表情。

木村「おお、見てくれよ!ほら!10,000超えたんだ!」
水谷「お前これ、どういうことだよ」

 水谷、ぐったりとしてるまりえに近づく。

水谷「何も食べさせてないのか?」

 木村、うわごとのように話し出す。

木村「まりなが誰よりも幸福を感じやすい子だったんだよ。飯も、服も、金も、全部まりなに費やした方が、家族全体の幸福度が上がるんだ。だから俺とまりえの飯は、すべてまりなにあげてるの」

 水谷、まりなの皿の上を見る。見慣れない肉の塊が皿の上にあることに気づく。

水谷「これ、何の肉だ?」
木村「まりながまだまだお腹空いたっていうからさ」

 水谷、そこで木村の片腕がなくなっていることに気づく。

木村「俺の幸福感が減るよりも、この子はたくさんの幸福を感じてくれるんだよ。だったらしょうがないよねぇ」

 木村の狂気じみた笑いが部屋じゅうに響き渡る。

 木村、最後にこう付け加える。

木村「これで家族全体の幸せが増すんだから」
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