「これはすごい!」
産婦人科の医師が、妊娠2ヶ月目に入った女性を検査して驚きの声をあげる。

「あなたのお子さんは既に1歳並の知能を持っていますよ。」
「ええ。特別な育て方をしていますから」

母親は、自信を持って頷いた。


-「天才の育て方」というノウハウがある。

子供には母親の胎内にいる時から意識があって、外から声をかけられることで成長のスピードが速くなるという内容だ。


その母親は教育熱心な女性であった。
この方法に基づき、お腹の子どもへ常に話しかけ、様々な分野の読み聞かせをし、極上の刺激を与えていた。


その1ヶ月後、つまりは妊娠から3ヶ月目の時期である。


「ママ、ママ。」
この母親は、お腹の中から自分に呼びかける声を聞いた。驚異的な成長の速さである。
母親は自らの方法に自信を深め、教育を続けた。


妊娠してから4ヶ月目。


胎内の赤ん坊は第一次反抗期を迎えるようになる。
何でもかんでもイヤイヤと言い出すのだ。

もちろん他の人間にその声が聞こえるわけない。


「いやいやまさか、ありえませんよ」
最初は彼女を絶賛していた医師も、徐々に母親に疑いの眼差しを向けるようになる。

だが母親は気にしない。
自分の子供のことは自分が一番、分かっている。


赤ん坊の成長はどんどん加速していく。
妊娠5ヶ月目には第二次反抗期を迎えた。一般的には小学生後半から中学生の精神年齢である。

「さっさと外に出せ!くそばばあ!」
どこから覚えて来たのか口汚い言葉が腹のなかから聞こえる。

だがそれも可愛いものだ。母親はやはり気にせず、むしろ誇りに思っていた。


妊娠6ヶ月の頃には、胎児の様子もだいぶ落ち着いてきた。
自分の頭で何かを内省し、今度は口数が少なくなる。

たまに意味深なことを呟くのは、精神が成熟している証拠のようにも見えた


妊娠7ヶ月目。
次第に赤ん坊からは母親を気遣う発言が増え始めた。

「母さん、いつもありがとう」「あまり無理しちゃダメだよ」「何か辛いことでもあった?」といった感じである。


さらに何ヶ月か経ち、いよいよ出産の日。



ついにその赤ん坊は、外の世界へと出てきた。



「おかしいな。泣かないぞ?」

子供を取り出した医師が慌てている。



赤ん坊の表情は、穏やかで非常に落ち着いていた。


彼は、まるで悟りを開いたかのように退屈な顔をして、じっくりと周囲を見渡していたのである。




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