とある研究所に報道陣が集まっていた。

「これが人工知能が描いた美少女のイラストですか」
記者である僕が尋ねると学者が答えた。

「ええ、どうでしょうか?素晴らしいと思いませんか」
「はい、いやしかし」
そこには確かに美少女のイラストが描かれている。しかし、その目がどこか虚ろで、口角の上がり方が微妙に不自然で、なんとも言えないアンバランスさを持っていた。

「どこか違和感のあるように思えます」
僕は正直な自分の感想を、彼に告げる。

「それはあなたが旧現代人的な発想だからですよ」
学者は自信満々に答えた。


「この絵は最新科学の結晶が導き出した最適解。ビックデータを統計処理したものなのです。つまり合理的な美しさと言えます。我々はこの良さを理解できるようにならねばなりません」

他の記者たちはみな一様に頷く。


「これは素晴らしい」
「新時代の可愛さというやつですな」
「私が今まで求めていた美のような気がします」

だが僕は、どこか漠然とした引っ掛かりを感じる。

しばらく考えて、その正体に気づいた。


「どこかで見たことがあると思ったら……『不気味の谷』じゃないか!」

不気味の谷、ロボットの外見を人間の顔に近づけていくと、ある地点でロボットに嫌悪感を抱いてしまう現象のことである。

僕は、熱心に学者の意見を聞き入っている報道陣を見ながら、ぽつりと言葉を漏らした。


「人類は、自分たちの外見に近づき過ぎるロボットに嫌悪感を抱くことで、人間としてのアイデンティティを保って来た。しかし、もし我々があの顔を愛するようになってしまうと、近いうちに人類は……」



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