照りつけるような太陽の下。私は自らの会社へと続く道のりを歩いている。
地下鉄からオフィスまでは徒歩10分。高層ビルに反射した光がキラキラと眩しく、コンクリートの地面はどうしようもなく熱い。

「なんでこんなに暑いんだ」
ぽつりと呟いた独り言だったのだが、私のスマホからは機械的な声が返ってきた。
「近年、さらに高層ビルが増加したせいです。都心部に集まる人が集中したとのことで」

「なるほど」
私は納得する。そう聞くと「しょうがないな」と思えてきた。自分だってその責任の一端を担っているという気さえする。自業自得、因果応報というやつだろう。


横断歩道に差し掛かり、信号が青になったのを待って一歩踏み出したまさにその時、私は小さな段差に足を引っ掛け、躓いてしまった。
倒れこんだわけではないが、周囲の人々がチラッとこちらに視線をやるのを感じる。どうにもバツが悪い。


「なぜ躓いたのだろう」
再びスマホからは声が聞こえる。

「精神的な疲労の蓄積によって注意力が散漫になっているようです」
「なるほど」

私は再び納得した。しかし相変わらず便利なものだ。

複雑化した社会とITによって管理された世界。つまりそれは、あらゆるものの因果関係というものが見えにくくなった時代と言える。

そんな世の中で、人々が求めだしたのは「原因」である。

なぜ自分がこんな目にあったのか?なぜこんなことが起きてしまうのか?
たった一言、「それっぽい説明」があるだけで人間はいとも簡単に納得してしまうのだ。

言ってしまえばその真偽はどうでも良い。

究極「前世の呪い」や「風水のせい」でも十分なのである。

とにかく原因がわかれば解決策が見えてくる。
解決できると思えるのなら、未来に期待が持てるというわけだ。

「しかし精神的な疲労か。回復させるにはどうしたら良いのだろう」
私がつぶやくと、スマホからはやはり画一的な音声が聞こえたきた。

「私の原因解明の精度が甘いからだと思われます。プラン変更をオススメします」
「なるほど、そんなものか」

私は納得し、なんの躊躇もなく


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