僕には物心ついた時からどうしても苦手なものがあった。それは、集合体である。
一つ一つは大したことなくても、密集し大群となると途端に薄気味悪くおぞましく思えてしまう。

蜂の巣だったり、蓮の花だったり、いくらだったり、とにかく同じようなものが何個も何十個も何百個も一面に広がっているのがダメなのだ。
修学旅行での集合写真だって見直すは相当にきつい。

想像しているよりも集合体は僕たちの身の回りにたくさん潜んでいる。ご飯粒だって立派な集合体なのだ。
可能な対処法といえばひたすらに集合体から目をそらし、必死で意識の外へと追いやることくらいなのである。だが目を瞑れば全てが解決するなんてものでもない。
近くにそれがあるということだけで身体中から冷や汗が滝のようにとめどなく溢れるのだから。


しかし、だいたい中学生くらいになると、日常生活の中で集合体が存在する場所が掴めてきた。そこから距離をとればそんなに大変なことではない。
もちろん和食の時はやはり大変だが、可能な限りご飯の量を少なくしてもらい食事開始と同時に胃の中に放り込むなど、何とか毎日の生活を維持していた。

そんなある日のこと。理科の授業で教科書に奇妙な写真が載っていた。梅干しみたいな円球が薄緑色の直方体の中に浮かんでいる。

別に集合体ではない。しかし気持ち悪い、と一目見て思ってしまった。生理的に受け入れないと本能で察する。
壇上に立つ教師が僕たちに向かってその図の説明を始める。彼の言葉の意味がわかるにつれ、僕の顔はだんだんと青白くなり、そして無意識のうちに全身を掻きむしろうとしていた。

「これは細胞というものです。あなた方の皮膚にはこの細胞が敷き詰められています」



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