「旧幹線」

獣道を歩きながら、生い茂った森を抜けると開けた場所に出る。
「お、あったようだぞ」
少し前を歩く友人が嬉しそうに声を上げた。僕の歩く足も自然と早くなる。

「わ!」
目の前に現れた巨大な機械の塊を見て僕は声を上げた。

かつて存在した鉄の細長い乗り物。直方体のフォルムは外観が所々剥げ、緑色の苔が生えている。
今の時代、それは「旧幹線」と呼ばれていた。

「やっぱり本物は違うな」
彼は胸から下げたカメラのレンズをそれに向ける。

「うん。大迫力だ」
僕もまた生唾を飲み込みながら何度も頷く。


ワープ技術が確立されてからしばらくの時が過ぎた。

人々はものの数秒で世界中の至る所へ移動できるようになり、その結果として交通機関は消滅した。
「道」というものも必要なくなったのだ。街から街へ、都市から都市へ。目的地へと直接ワープすれば全ては事足りる。
 

そんな時代の反動もあってか、かつて人類を運んでいた乗り物を愛でる僕らみたいなマニアが増えていた。

「来た甲斐があったな」
「うん」
僕は振り返り、今来た道に視線をやる。

それはかつては道路と呼ばれ、今や獣すら通らない獣道となっていた。



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