「自分だけは大丈夫」


「自分だけは大丈夫」
そう考えてしまうことは人間の心理に根ざした深い問題だ。


私もまた、自分だけは大丈夫だと考えてしまった愚かな女の一人である。



最初はふとした予感であった。

駅の改札を抜け商店街を通り抜ける途中、後ろから歩いてくる男性に気づいた。
自分より一回り上くらいの中年男性。


あぁ、あの人もこっち方面に帰るんだと思った程度だった。



しかしマンションの前まで来て、故障のせいかここ数日鍵を差し込まなくても開くようになってしまったエントラスを抜けた辺りで「おや?」と思う。


その男もまたエントランスを通り抜けているのだ。



このマンションの入居者の大半は女性である。


珍しいと言えば珍しいが、かといって絶対にありえないことではない。例えば恋人の家にきた可能性もあるし、彼がここに住んでいる可能性も決して0ではない。




たまたま同じ電車から降りた男が、たまたま私と目指しているマンションが同じだった。


そういった偶然は十分ある。
ただなんとなく嫌な予感がしていたのは間違いない。


エレベーターに乗り込み「5階」のボタンを押しながらも、同じ階で降りませんようにと私は思っていた。
しかし私の予想に反し、彼はエレベーターに乗ってこなかった。
どうやら1階の住人のようだ。



「うん、そうだよね」
私はボソッと独り言をもらす。


エレベーターは5階に到着し、奥から3番目の部屋の前に私は立ち止まった。ポケットから取り出したそれを、ドアノブに差し込もうとした時、



「あの?」
背後から声が聞こえた。見るとあの男が立っている。


どうやら階段を使ってきたらしい。彼は、私が持っているピッキング道具を見ながら訝しげに尋ねた。
 

「僕の部屋で何をしているんですか?




-私だけは大丈夫。決して捕まるはずない。

今までそう思っていたのだが、やはりそれはとんだ幻想だったらしい。


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