「ひきこもり」


僕の世界はこの部屋の中。扉が一つだけある幼い頃から使っていた愛着のある部屋。

この部屋以外の世界は僕にとって現実じゃない。幻想でまやかして関係のないものだ。

ドンドン、と扉をノックする声が聞こえる。

「良い加減、開けなさい!」
「いつまで引きこもっているつもりだ!」


違う。僕が「この部屋の中」に引きこもっているんじゃない。僕は「この部屋の外」にいるんだ。

この部屋が世界を覆っている。この部屋の外にいると思い込んでいる僕以外のみんなが、実はこの部屋に閉じ込められている。

 
いつからかそんなことを考えるようになった。
あぁ、本当にそうなったらどんなに痛快で楽しいだろうか。


その妄想をどうにか現実のものしたくて、僕はネットでいろいろな、多くは眉唾もので怪しくておどろおどろしく、危険で嘘くさい情報をひたすらに集めて実践した。


そして、たまたま見つけた古代の黒魔術に祈ったその願いは、あろうことか本当に叶えられてしまったのである。

 

テレビをつけてみる。


ニュースは連日、緊急速報ばかりだ。


「突如、巨大化した東京都**区の××家の一室は今もなお拡大を続けています。地球の水位は上昇、生態系は崩壊の一途を辿り、人間の住めるスペースは縮小しています。『部屋』の扉はあらゆる器具を用いても壊すことができず、部屋の中にいる一人の少年が開けようとしなければ、一生閉じたままの可能性の高いとのことです」


ただっ広い部屋の中で、僕は特に何の感想を抱くこともなくその映像を見ている。



あいかわらず外からは大勢の人間の声が聞こえていた。
 
「開けななさい!」
「ねえ!聞こえているんでしょ?お願いします、開けて!」
「頼むぅ、開けてくれぇ!」



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