「座敷親父」

友人の結婚式に出席していた時、私はふと別のテーブルに見知った顔がいるのを感じた。

中年の男性だ。私は華の女性大生なのだから、そんな年の知り合いがいるのは滅多にない。
親戚でもないし、大学の先生でもなさそうだ。
誰だろうとしばらく悩んだ挙句、ある一つの噂話に思い当たった。

それは都市伝説とも言える奇妙な話である。


「ねえねえねえ!」
隣に座っている友達に話しかける。
「なに?」
新郎側の父親がたどたどしく感動的な挨拶をしている真っ只中だからか、友人は声を潜めていた。批判的な目で私を見てくる。

「あのおじさん、私知っているんだけど」
友人は眉をひそめ、私が指差した先を見る。そしてすぐに
「で?」
と聞き返してきた。だからどうしたのだと。

「でも知り合いじゃないのよ」
「どういうこと?」
友人の眉間にはさらにシワが寄る。

「あの人きっとね、都市伝説の座敷親父よ」
「座敷親父?」
寄りに寄った両眉の下にある友人の目がパチパチと開閉した。

「最近噂になっているんだって。あらゆる結婚式に出没する謎の中年おじさん。あまりにも目撃情報が多いから、幸せな場に姿を見せる座敷童子なんじゃないかって言われている」
「で、子供じゃなくておじさんだから、座敷親父?」
「そう!実際にいるんだぁ。きっとあのおじさんがいるんだから、この結婚は幸せになるね」
「たまたま似たような顔なんじゃないの?ほら、おじさんってみんな同じ顔に見えるし」
「違うよ!てか同じ顔じゃないよ!」
と、私は急におじさんたちの個性を主張してみる。

「あちこちの、しかも全く無関係の結婚式に、正真正銘あのおじさんがいるんだって。画像も出回っているし」
「ふうん」
友人は最後まで信じられないといった表情だった。その横顔を見て私は決意を固める。

こうなったら私が証拠を掴むしかない。



ということで結婚式が終わった後、私は座敷おじさんの後を追うことにした。
途中でふわっと消えたりするものなら、妖怪決定だ。できればその瞬間を写真にでも撮りたいところ。


おじさんは式場から出ると、辺りをキョロキョロとさせて携帯電話を手に取った。


私はその会話を、物陰に隠れて聞いている。
 
「ええ。今終わりました」
おじさんは電話主に対し、何かの報告をしている。まさか妖怪のボス的な人だろうか?

「はい、次は来週の日曜日ですね。いやいやこちらこそお世話になっています。ただでご飯が食べれて幸せな気持ちに浸りながら給料がもらえる。結婚式のサクラほど美味しいバイトはないですから」




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