「狐の嫁入りと変態男」(2話分)

「一緒に行かないか?」
 
昼の時間。
都市伝説ハンターのオフィスを出て、近くの定食屋でお昼を済まそうとしていた俺は、卓(すぐる)さんに話しかけられた。

見た目は身長も高く丸々と太った巨漢の男。顔もぱんぱんに膨らんで丸メガネをかけている。
そしていわゆる性癖が特殊で、都市伝説に出てくるような怪奇的な女性しか好きになれないのである。


「良いですよ」
俺は平静を装って答えたが、正直少しうんざりしていた。
彼の趣味嗜好は未だに理解できない。


俺たちはオフィス街を抜け、二人並んで歩き出す。

「な、なぁ。俺の愛ってなぜ届かないんだろうな」
急に重いテーマを語り始めた卓さんに俺は眉をひそめる。彼はいつもどこかオドオドと話し始める。

「いきなりどうしたんですか?
「俺の愛は本物だ。し、しかし、人間と妖怪はやはり結ばれないものだろうか?」
こんな暗い話とは正反対に、空は快晴である。通り過ぎる風が気持ち良い。

「どうでしょうね」
「正直に言ってくれ、俺はどうしたら良い?」

俺は言葉を選びながら彼に、日頃から思っていることを告げる。

「アプローチに少し難があるのかもしれないですね。少し衝動的というか、情熱的すぎるというか」
「な、なるほど、そうか。そういうものなのかもしれない」
しょんぼりする彼を見て、慌ててフォローの言葉を入れる。
「相手がそれで喜べば良いとは思うんですけど」

その時、ポツリと雨が俺の頭に当たった。思わず見上げてみるが、雲ひとつない。

「狐の嫁入りだ」
俺は呟いた。
「狐の嫁入り、か」
卓さんはどこか気取ったような口調でつぶやき、そして聞いてもいないのに昔話を始めた。

「お、俺は狐に恋をしたことがあった」
「狐って、あの動物のですか?」
それはもう単に異常者だ。獣姦だ。相手は人間でもなんでもない。

「単なる狐じゃない。コックリさんだ」
「あぁ」
それなら大丈夫か、と納得するあたり、俺の常識も相当壊れてしまっている。

「きっかけは、彼女が俺の仲間に取り付いたことだ。目がきっと細くつり上がって暴れ回り、俺たちに罵詈雑言をなげかけたいた。だがその姿がなんとも言えず愛くるしかったのだ」
「マジですか」
今のどこに、可愛らしさがあるのかさっぱりわからない。

「で、俺は彼女に求婚し、しかし彼女はやむにやまれる理由があったのだろう。そのまま姿を消してしまった」
「……単純にフラれただけなんじゃないですか?」
「違う!」
卓さんは断定した。

「なぜなら彼女は、俺が彼女の後を終えるようにと手がかりを残していた。おそらく周りの監視が厳しい状況だったんだろう。あからさまな情報は残せない。俺は全力を尽くして調査し、僅かなヒントから、彼女が他の狐と結婚する日を突き止めた」
聞けば聞くほどストーカーだ。

「で、結婚式に行ったんですか?」
「そうだ。狐の嫁入りに、俺は彼女を奪うために式に飛び込んだ」
「無茶苦茶ですよ」
「無茶苦茶なものか!それにただ愛を求めているだけだ、何が悪い」
「いやそれ、都市伝説相手だから大事にはなっていないだけで、人間にやったらアウトですよ。法律で禁止されています」

「な、なんだって?」
「新郎新婦と恋仲にあった人が、呼ばれていない結婚式に乱入するのは犯罪なんです」
「そうだったのか」
落ち込む卓さんの横で、俺はあることに気づいた。

「あ、別に恋仲でもなかったのか」




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